高齢化社会の進行により、身体機能を補完するため、体内に医療材料を埋入する手術が増加しています。
骨折手術や腰痛、しびれ、麻痺などの脊椎手術において、インプラントプレートや金属製の骨ねじが使用されています。インプラント用の金属製骨ねじは、手術中や使用期間中に破損する可能性を考慮して、予め力学的性能評価が行われています。
ねじの種類は様々にあります。使用される骨の種類により、海綿骨用は”キャンセラススクリュー”、皮質骨用は”コーティカルスクリュー”に分けられています。これら医療用ねじは薬事申請が必要であり、評価項目も複数あります。その中の機械的特性に関する要求では、”ねじ込み時のトルク”、”引き抜き強度”、”ねじり破壊強度”の評価が必要とされています。試験方法は、JIS規格のT0311 やASTM規格のF543 で規定されています。以下では、 JIST0311 に基づいた機械的特性試験の手順と要項について説明します。
JIST0311 では、”ねじ込み試験”、”引き抜き試験”、”ねじり破壊試験”の試験方法が記載されています。試験に使用する治具や試験機の精度、また、実際にねじをねじ込み、引き抜く試験を行う場合に使用される模擬骨の仕様なども記載されています。
JIS規格試験
※一部 JIST0311 より引用しています。
※試験の詳細につきましては、JIST0311をご参照ください。
1.ねじ込み試験
骨ねじのねじ込み特性を評価するため、骨ねじを一定の荷重及び回転速度で模擬骨などにねじ込む試験です。4cm角の模擬骨にスラスト荷重100N~200Nでねじを押し付けた状態で、1rpmの回転速度で4回転(1440度)でねじ込みます。
2.引き抜き試験
骨ねじの固定性を評価するため、模擬骨などにねじ込まれた骨ねじを一定速度で引き抜く試験です。ねじ込み試験終了後に、10mm/minの移動速度でねじを引き抜き、最大引き抜き荷重を測定します。
3.ねじり破壊試験
骨ねじの力学的特性を評価するため、骨ねじが破壊されるまで一定の回転速度でトルクを加える試験です。5つのねじ山を治具(チャック)から出した状態で、1rpmの回転速度で破壊するまで力を加え、トルク-回転角度の曲線を測定します。
4.模擬骨
力学的試験用模擬骨は、ASTM F 1839 に準じたSawbone社製の、皮質骨用にはSolid Rigid polyurethanceが、海綿骨用にはCellular Rigid Polyurethanceが推奨されています。
5.試験結果報告
①試験機の名称及び型式
②ねじり破壊試験で、トルク-回転角度曲線、2度ねじり降伏トルク又は20度トルク、
最大トルク、必要に応じて破壊角度
③引き抜き試験で、最大引き抜き荷重
④ねじ込み試験で、模擬骨などの種類、最大トルク
⑤温度、湿度
⑥試験年月日、試験場所及び試験者名
6.測定仕様
トルク検出器
# | 項目 | 仕様 | 単位 | |
---|---|---|---|---|
トルク (破壊) | 1 | 最大トルク | 30 | Nm |
2 | トルク表示 | 30.00 | Nm | |
3 | トルク分解能 | 0.01 | Nm | |
トルク (ねじ込み) | 1 | 最大トルク | 1 | Nm |
2 | トルク表示 | 1.000 | Nm | |
3 | トルク分解能 | 0.001 | Nm | |
トルク精度 | 1 | センサ精度 | ±0.5 | % of F.S. |
2 | 零点移動 | ±0.4 | % of F.S. | |
3 | トルク総合精度 | ±1(*1) | % of F.S. | |
4 | 機械的応答周波数 | 約20 | msec | |
5 | 過負荷保護対策 | 装備(*2) | ||
回転数 | 1 | 回転数精度 | ±1 | % of F.S. |
2 | 使用回転数可変範囲 | 1.0~30.0 | rpm | |
3 | 分解能 | 0.1 | rpm | |
角度 | 1 | 分解能 | 0.01 | 度 |
2 | 角度設定精度 | 0.01 | 度 |
荷重検出器
# | 項目 | 仕様 | 単位 | |
---|---|---|---|---|
押付け荷重 | 1 | 最大荷重 | 200 | N |
2 | 荷重精度 | ±1(*1) | % of F.S. | |
3 | 分解能 | 1 | N | |
4 | 過負荷保護対策 | 装備(*2) | ||
移動量検出 | 1 | 最大検出移動量 | 150 | mm |
2 | 分解能 | 1 | mm |
※2 負荷120%でセンサ停止(トルク・荷重)
※JIST0311に準拠した金属製骨ねじの機械的特性測定機は、こちらから。